日本画家【伊東深水】画題や構図の考え方!色調や衣装のおさめ方!…著作から日本画を学ぶ⑥

おぼろ
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    「美人画の描き方」第6章 制作

    美人画の描き方 伊東深水著
    美人画の描き方 伊東深水著
    わたし

    ここまで、伊東深水著「美人画の描き方」を
    5章にわたって、拝見してきました。

    あと、6章から10章まであります。
    ※詳細は下に

    昔の画学生さんたちは、
    情報源が少ないと思われる中、
    深水さんのこの本は、本当に貴重だったんでしょうね。

    ここからは、次の項目についての視点です。
    どれも興味深いですね。

    第6章
    ⑴画題
    ⑵構図
    ⑶色調
    ⑷服飾および模様
    ⑸背景および添景

    ※ 第7章  仕上げ
      第8章  実習
      第9章  草画小史
      第10章  美人画小史

    ビリー

    僕には、ちょっと難しいんだけれど、
    絵を描く人にとっては
    とても大事なことみたいなんだよ。

    ⑴画題

    (第6章22ページ約7500字要約)

    • 画題は、まず自然の何物からも見出す心掛けが肝要。
      殊に、現代美人を描こうとするものは、
      目まぐるしい社会に豊富な画題を見出せるはず。
    • 家族、街路の歩道、田野ですれ違う婦人、店頭、
      事務室、デパート売り場、電車の停車場、服飾、
      結髪、あらゆるところに多種多様の画題はある。
    • 美人画が風俗、描かれる人の生活の一部を表現
      することに立脚している以上、あまり遠くさか
      のぼって描くのは歴史画の範疇になってしまう。
      まずは、現代の風俗や美人の美を理解するのが先。
    • 初学者は、最初の目的、意図を忠実に追及すべき。
      制作途中で新たな課題を取り入れることで、
      初めの意図が失われてしまうことが良くあり、
      良い作品にはならない。
    ⑵構図
    • 主題、構図、大きさの順で、制作をするのが本来。
      しかし、実用としての軸物においては、まず画面が
      決まっており、次に主題、構図となる。
    • 軸物は、細長く、特殊な構図であり、
      美人画では、窮屈にならないように収め、
      「余白」が充実していなければならない。
    • 余白に力がないときには、背景、添景を加え、
      美観を作ることが肝要。
    • 南画において、小さな画面で雲などで省略し、
      自然の広大さを表すという方法は、日本画に大いなる
      暗示を起こすものである。
    • 構図の中に、焦点を作ることも必要。
    • 人物を重ねる場合、奥の人物から描くことで、
      全体の形状が確実性を持ち、不自然にならず
      描くことができる。
    ⑶色調
    • 美人画の色調は、服飾(衣服、帯、襟、持ち物)
      に他ならず、画題をあらわすための色調である。
    • 日本の服装は、藤原の昔から特殊な発達をし、
      徳川の時代には、豪華商人の富の発達は、婦人の衣装の
      華美に表れている。
    • 明治以来、激しい変化があり、色合いや模様の流行
      、洋装、洋髪の変化もあった。美人作家としては、
      流行に留意を怠ってはならない。
    • 和装での帯の美観は、
      全体の色調を引き締める役割を持つ。
    • 色調は、季節、時間帯の感覚として
      役立たせなければならない。
    • 運動する人を描く時は、重くならない色で。
      朝や夕暮れに静かに立つ絵では、清浄安静
      の色調を選ぶ。
    • ただ一つの色合いの美しさだけに捕らわれる
      のではなく、全体の調和を考えることが大事。
    ⑷服飾および模様
    • 描こうとする人物の年齢、性情、季節や時間などの
      表現は、まず服装からの第一印象を与える。
    • 作者の意図によって、服装の模様まで考えるべき。
    • 初学者は、模様を描くことによって、
      せっかくの姿態が美しさが阻害されることがある。
    • 実物を見て、忠実に模様を描けるようするうちに、
      配色や質感を飲み込めるようになる。
    • 技術が身につくと、実物に徹して、実際の見え方
      として不自然になることがある。
    • 実際の見え方として、光線や動きなどで
      変わってくる。特に日本画は、光線や、明暗で
      立体感を表現するものではない。
    • 美人画では、衣紋や模様のつけ方で、
      姿態や身体の丸みを表現する
      ほうが、効果的である。
    • 芸術としての省略と誇張を考えなければならない。
    縞模様
    縞模様 横の縞柄
    横の縞模様
    縦の縞柄
    縦の縞柄
    大模様
    ⑸背景および添景
    • 背景、添景は、人物の位置や周囲との関係を説明し、
      その主題を強調するために必要なものである。
    • また、描き過ぎないことも必要である。
    わたし

    日本の着物って、生地そのものが、芸術品であったりするし、
    浮世絵で見る着物の柄も、とっても大胆なものがあって、
    今でも新鮮に感じます。

    そういう、視覚に訴える服飾は、
    美人画にとっては、とーっても重要ってことなんですね。

    人物像を浮き上がらせるために、
    あえて柄を選んだり、省略したり、という
    絵師としての考察と作業を
    深水さんは、してこられたのですね。

    ビリー

    ふ~ん、そうなんだね。
    今どきのわんこは、わんこ服着てるし、
    おしゃれわんこの絵を描く絵師が現れるかも?

    わたし

    そうね、そういう絵を描く画家さん、
    すでにいらっしゃるかもね^^

    では、続いて、7章へ行きますよ~!

    「美人画の描き方」 第7章 仕上げ

    ⑴ 顔および手足

    (約8ページ分3200字を要約)
    ※ 工程をかなり詳細につづられていて
      省略しても良い部分がわからないので(汗)
      原文に近いです。

    • 顔や手足の肉線は、なるべく薄く、細く、
      目立たないように描くほうが良い。
      墨線は、胡粉を上から塗ってもかなり目立つ。
    • 着色の初めは、胡粉の上澄みに、ほんの少し
      黄土の上澄みを加えて、目、鼻など顔一面に塗る。
    • 髪の生え際は、毛の中へぼかしこんでおく。
    • それが乾いてから、鼻やまぶたというような凸面
      胡粉で「返り隈」をとる。
    • だいたい顔の立体が出来上がったら、襟足をぼかす。
    • また、顔全体に薄く胡粉の上澄みをかける。
    • また、生え際は、毛の中へぼかしておく。
    • 赤口朱の上澄みに、臙脂を極めて少量加え、
      胡粉の上澄みを少々混ぜたものを
      顔全体に水を引いて半乾きの時に、
      頬や目隈の部分をぼかす
    • 全体が乾いたら、再度鼻筋を胡粉の上澄みで
      「返り隈」をとる。この返り隈は、薄い色で
      2、3度重ねていくほうが結果が良い。
    • は、最初に黒眼(虹彩)を書き込み、
      眼縁のぼかしをする。墨は、青墨の上澄み
      (青墨にこだわらなくても良い)に
      白群の上澄みを少々混ぜて使う。
      何度となく塗り重ねる。
    • のぼかし。顔全体に水を引いた後、
      半乾きの時に毛並みを描く。少々毛並みが
      そろわずともあまり目立たない。
    • 白目は黄土の上澄みで目尻から少し
      「返り隈」をとる。やりすぎると
      洋画のようになるので注意。
    • 口紅は、赤口朱の上澄みを少々加えたもので
      (これに臙脂を少量加えても良い)塗る。
      あまり赤くなると、下品になるので注意。
      混ぜ色は、それ以外の色を混ぜても良い。
    • 生え際の耳の上など、ごく薄い黄土具で
      ぼかすのも悪くない。
      実物をよく見て研究すべき。
    • 作者の意図により、色の調子など創意工夫すべき。
      ただし、臙脂の使い方には要注意。
      上に浮き出してくるので、最後に使用すべき。
      その時も、薄く加えて加減を見るべき。
    • 顔や手足などの影の方を黄口朱の上澄みや
      岱赭(たいしゃ:あか)などで隈どったり、
      墨線の上に色線を薄く加えると下品になる。
      赤口朱の上澄みと黄土具で薄く仕上げるのが、
      一番上品で、肉の感も良く表れる。
    • 美人画は、手足を見ただけでもその人の
      美しさを彷彿とさせるほどの魅力が
      なければならない。
      神経の動きは感情の動きを示し、容貌に次いで
      重要。
    • 返り隈をとるときは、一部分だけ水を引くのは、
      シミにつながるので、必ず全体に引くことが必要。
    • 夕暮れや夜の絵は、陰の方へ墨や白群などで
      隈取っているものがあるが、汚くなる。
      この場合は、下塗りの色に黄土を少し強くして
      塗るほうが上品に仕上がる。
    • 日本画は、陰を用いずして影を表す
      という方法をとるほうが良い効果を収める。
    ⑵髪
    • 擦ったままの墨を用いず、多少でも不透明な色を
      混ぜて作るべきである。
    • 青墨と白群の上澄みを混ぜたものを使ってきたが、
      最近は、焼き白緑に白群を加えて落ち着いた色調を得た。
      一時、古墨の棒絵の具を使ったが、下品になりやすい
      ので、使わない方が良い。
    • 髪は、髷(まげ)や毛並みに沿ってぼかす。
      一度に塗らず、10回くらい重ねて仕上げる。
    • 毛を1本1本描いた時期もあったが、
      硬くなりやすいので、今は用いられていない。
      地塗りで十分に調子を作ってから、髪尻や
      おくれ毛などを少し描いて、全体の毛筋を
      思わせるやり方がすっきりしている。
    • 髷の周囲まで墨をぼかすのは、理解に苦しむ
      やってはいけない。
    ⑶落款(らっかん)および印章  
    • 落款、印章は、作品の対象として
      居室に飾られるようになった時に必要となる。
    • その歴史は、足利時代の北画に始まった。
      作画当時の年齢まで書き加えた雪舟の例もある。

      徳川期に入り、画面を統制して沈着の気持ちを
      起こす効果となった。

      光琳の鮮やかな墨色美しい書体は、
      大きな印章とともに、審美的諧調を保っている。
    • 現代(※その当時)は、最も効果的に用いているのは、
      竹内栖鳳先生であろう。
    • 簡素な墨画や空間の多い書画での
      落款、印章の効果は、外せないものとなっている。
      よって、初めから、その位置を予定して
      構図を考える必要さえ出てくる。
    • 顔や体の向いている方には、落款をしない。
    • 「浮き落款」は良くない。
      流水の中に書き入れない。例外もある。
    • 落款は、作者の心境、品位、風格を表す。
      絵画よりも端的。
    • 自分の好む古人の墨蹟を学ぶなりして、
      構築したらよい。
    • 印章は、落款と有機的関係保ち、これも、
      作者の性格や嗜好によって趣を異にする。
    • 朱肉は、赤、赭、青、などあるが、赤が一般。
      赤には、黄口と赤口がある。
      赤口のほうが重みを与えて良い。
      他の色は、作品の色調に合わせて使う。
    わたし

    落款や印章のことも、学ばなければならないのね。
    奥深さを感じました。

    ビリー

    落款は、言ってみれば、サインだから、
    個性あふれるものがあってもよさそう。

    どんな落款があるのか、
    注意して観たくなってきたよ。ワンコだけど^^

    わたし

    では、この辺で。
    でも、もう少し続きますよ~