日本画家【伊東深水】模写は大事!絵画鑑賞で力をつける!…著作から日本画を学ぶ④

京舞妓スケッチ 清方筆
京舞子スケッチ 清方筆

    「美人画の描き方」第4章 習技 

    歌麿 北斎
    右ページ 歌麿  左ページ 北斎
    わたし

    いよいよ、実技に入ります。
    深水さんは、小学生の時には、親元を助けるためにも
    住み込みで働き始めたということなので、
    好きな絵を描けるのは、心の支えでもあったんだと想像します。

    ぴーちゃん

    今の日本では考えられない状況だったんだね。

    (1)模写および臨画(りんが:まねて描くこと)

    (6ページ約1300文字分を要約)

    製作の基礎をなすものは、どこまでも自然であり
     これを紙布の上に投写する技術が写生である。
     習技には最も写生に重きを置く

    ・日本画においては、自然を捉えただけではだめで、
     描線の練習、運筆の練習が必要である。

    ・運筆の練習には、古書や先輩の作品を模写すること。
     赤ん坊が大人の使う言葉をまねて覚えるように、
     模写や臨画する間に描線を理解し、
     絵画化する(先人がいかに自然を見、物をつかんだか)
     手段を覚えていく。

    ・模写の方法
     「透き写し」手本の絵に薄い紙を重ねてなぞり写す。
      手本は、なるべく線のはっきりしたもの。
      わかりにくいところは、めくって確認し理解して写す。
     「臨画」手本を横に置いて同じ大きさの紙に線描する。
      木炭や鉛筆で大まかに輪郭を取り、
      次第に細密に線描する。
      ほとんど同じように描けるまで描き、
      今度は、それを下絵として、薄美濃や土佐唐紙をあてて、
      清書したり、彩色を施す。

    手本は、浮世絵版画で、清長や歌麿の大首(胸像)が良い。
     生え際の毛筋を写すことは勉強になる。
      
    慣れたら、絵巻物や古仏画の摸本を探し、
     手本とすると非常に良い。
     縮小したものを使うと、線がいじけるので、
     かえって害になる。

    鉛筆スケッチ1
    (2)写生

    (9ページ約2000文字分を要約)

    初学生は、スケッチブック大小を用意。
     小は、持ち歩ける大きさ、大は、念入りに写生する時用に。

    ・写生は、静物から始め、動物、人体へと進むべきだが、
     石でも木でも、手当たり次第に写し取ってみる心掛けが必要。

    ・写生習得の正しい順は、まず西洋画の石膏写生で
     物の外郭と量との表現を学び、次に人体へ
    となる。

    人体の比例、重量感、姿態を
     自由に描く技術を習得すべき
    である。

    ・美人画においては、人体が描けるようになったら、
     着衣人物の衣服のしわ、衣紋を研究すべきである。

    ・西洋画と日本画の写生と異なる点
     西洋画は明暗によって面の形状を表すことに重点を置く。
     日本画は線の運用によってものの形を表現することが重要。

    ・人体の写生は、モデルとの距離と視点を
     正確に定めることが重要である。
     適当な距離と視点としては、対象の全体が、
     無理なく視野に入ってくる程度が良い。

    ・研究所へ通う機会のない人でも、兄弟、友人をモデルに、
     また、移動の車中でも懸命に練習を重ねることで
     十分に技術の習得ができる。

    ・器でも草花でも動物でも、美人画の背景、添景に役立つ。

    すべてのものの中に流れている生命をつかむこと。
     すなわち物を見極める力を養う方法となる。

    ・戸外で写生を毛筆でするには、矢立が便利
     ※矢立とは、和文具で携帯用の筆と墨入れ
     筆は、細い面相筆よりも腰の強い使い古したものが良い。

    写生の彩色は、後で思い出せるように入れておく

    ・描きたいと思ったものは、特に人物の場合、
     同じ機会があるとは限らないので、
     熟視して強く記憶に留める練習と心がけが必要である。
     

    毛筆写生
    毛筆写生
    わたし

    写して描く。まねて描く。鉛筆で描く。毛筆で書く。
    じっと見て描く。記憶するまで熟視する。

    大切だね!

    ぴーちゃん

    物の本質がわかるまで見る!

    わたし

    そうそう!

    次の写真は、詳しいことは書かれてないけれど、
    深水さんが、始めた絵の研究所の様子ではないかと思われるのです。

    みんな真剣そのもの!

    とても若い画学生さんたちですよね。
    、、イーゼルもあったんですね。

    モデルを写生する画学生
    モデルを写生する画学生
    (3)鑑画

    そのほか注意すべきこと(4ページ約1300文字分を要約)

    多くの絵画を見よう。日本画、西洋画問わず、
     彫刻、工芸でもしかり。新古問わず。

    ・デパートに陳列された書幅でも、展覧会の絵でも
     線の引き方、色の塗り方、配色の構図、など、
     受ける感じがどこから来るものなのか、などを見る。

    作者の態度、動機まで考える
     納得いかなければ、先輩知人に聞くことも必要。

    ・印刷物を見ることは、注意は必要。肉筆とは違う。

    ・美人風俗画を研究する人は、浮世絵版画はもちろん、
     更にさかのぼって桃山時代の肉筆浮世絵や、
     鎌倉時代の絵巻物は、特に、留意して観るべきである。

    ・日本画は、描線の使い方と単純な色彩の扱い方によって、
     物の性質や状態、情趣を表現するものである。
     自然の形象を単純化するところに表現の妙味がある

    ・昔は、絵の具についても、決まりきったものしかない時代に、
     広大な自然や人事を力強く表現しきったのである。
     古名匠の作品に触れることが大切である。

    ・それができない人も、複製によってでも
     熱心に研究する心掛けが必要である。

    ぴーちゃん

    深水さんは、後輩の育成にも熱心だったんだね^^

    ではでは、口絵の解説だよ
    今回は、深水さんのお師匠さんの
    鏑木清方(かぶらききよかた)先生の作品だよ。

    京舞子スケッチ 清方筆
    京舞妓スケッチ 清方筆 昭和5年3月作

    『京舞妓スケッチ』清方筆 について、伊藤深水さんの注釈

    京都の自然が産んだ特殊の人事美として
    京舞妓は実に驚異すべき存在である。

    これは、先年、清方先生が京に遊ばれた時の
    スケッチ帳から拝借撮影したもので、
    先生のスケッチとして珍しいもののひとつである。

    人形を見るような静かな美しさと、
    そのつつましやかな姿態が、
    筆少ない鉛筆の線に遺憾なく表現されている。