「美人画の描き方」第5章 技術
初めまして。わんこのビリーです。
いつか僕のことも日本画にしてね~
では、深水先生のご著書を拝見します。
(8ページ分約2000字を要約)
- 構想が浮かんだら、まず小下図を作る。
- 人物の時も静物でも、その背景、添景までしっかりと描く。
- 時には、写真を参考にしたり、応用することは、
悪いことではない。現代人の特権である。 - 写真と、絵画とは、その職能を異にする。
- ただし、いたずらに頼るのは、価値をなくし、
創意をなくす恐れがあるので、自然から受けた感銘を
基礎としなければならない。 - できた下図は下に置かず、假張(パネルなど)に貼るか、
壁に貼るなどして、全体を楽に見れるようにする。 - 何度も書き換えるので、耐えられる紙であれば
紙の種類は何でもよい。何度も修正を重ねる。 - 十分に手を伸ばして書くようにする。
木炭なら、長い木炭ばさみを使う。 - 更に紙を重ね、それを清書して整え完全な下絵を作る。
- 下図の時に不安な点があると、
本図でどうにもならなくなることがあるので注意する。 - この過程は、本図の製作とは違う楽しさがある。
- 大家の狩野芳崖、橋本雅邦先生でも、下図に
苦心惨憺の跡があったり、二十余枚もの下図が残っている。
一枚の絵のために、労力を惜しまない。 - 習作(練習用の作品)では、汚くなっても良いので、
ぶっつけで自由にやることも必要である。
(2ページ分約600字を要約)
※ 原文では、「製作」という漢字で書かれていますが、
現在では、「制作」のほうが妥当なので、
ここから先は、「制作」に換えることにします。
- 絹本の制作では、透けるので、枠があれば、
下図の写しは簡単。紙本制作では、細かな部分を写すには、
念紙を使う。 - 念紙の作り方。日本紙を揉んだものに、
木炭を粉にしたものを「お酒」で練ったものを
平らに塗り付け、乾かす。 - 小下図を大きく伸ばす時は、方眼式引伸法を
参考までに、紹介する。
小下図に、碁盤状に線を引き、大きくするほうへ、
同じ比例で描きうつす方法。 - ただし、この方法には、賛成しない。
写し取っている間に、創造的な気迫を失ったものが
出来上がることが多い。 - 不正確な点があった場合、それが増長されてしまうから。
初学者は気づきにくい。 - よって、小下図を見ながら、創作力を駆使して、
下図を「創作」することを望む。
(6ページ分約1000字を要約)
- 線には、2種類ある。
西洋の線は、ものや状態を表す「すじ」であり、
東洋の線は、「筆意を表す線」である。 - 墨絵は、あらゆるものの性情と作家の気迫を表すので、
西洋画の素描とは全く異質なものである。 - 古来から名前のある線
「枯柴描」…ぽきぽきとした線
「釘頭鼠尾(ていとうそび?)描」
…打込みが強く終わりが細くなる線
「蘭葉描」…柔らかに連続を見せる線
「鉄線描」…肥痩なく細くて力のある線
「遊糸描」…糸のように細くて柔らかい線 - 古来、美人画に用いられた線は「遊糸描」が多い。
江戸時代の懐月堂一派のような太い線は例外。 - 人物画は、仕上げに入れる線によって
最後の死命を制するものであるから、
古画の模写、臨画の練習を積むべきである。 - 線の引き方。
軽く肘をあげ腕に力をこめ、躊躇せず、気持ちを保つこと。
細かい線を引く時は、手首は筆の穂の近くまで下げるが、
気持ちは、同様に充実させて保つこと。 - ヤタイ引き(建築等に用いる)という
定規を使う方法をとることもある。
定規の溝に軸となる棒を当てて、
まっすぐな美しい線を引くことができる。
(7ページ分約2400字を要約)
- はみ出さずに塗る。むらなく塗ること。
- 絵の具の量は、必要量の二倍は作る。
- 余った絵の具は、膠抜きができるので、(ぎりぎりに作らず)
ゆとりを持つことが大切である。
※膠抜きとは、余った絵具から膠分を抜いて、粉の状態に戻すこと。
お湯を注ぎ、絵の具を沈殿させ、水分を取り除く。 - 画面左上から右下へ、塗り進める。
- 筆に含む量は、溜まりすぎず、かすれないように。
- 顔彩を使うにしても、一度絵皿でかき回し、ムラをなくす。
- 大きな画面には、刷毛や連筆を使う。
画面に一度、水を引いてから、色を塗る。
続いて色を塗っていけば、筆跡が少なくなる。 - 絹の場合や大作の場合は、立てかけて塗るほうが
良い結果になることがある。
その理由は、全体を見渡せること、
1か所に湿度が溜まらないこと。
金箔を貼るときにも有効。 - 絵の具はすべて、薄いものを重ねて塗る。
下の絵の具がしっかり乾いてから塗る。 - 「張紙の法」…塗りたくない部分に薄い紙を貼っておき、
彩色した後それをはがす方法
初学者は、十分に熟達してから試すべきで、
丹念に塗り重ねることをすべき。 - 「彫塗り」…描線を避けて塗る
「つぶし塗り」…描線の上から塗る
「彫塗り」はほとんど用いられていない。 - 「隈取り」…画面に水を引いておき、半乾きの時に
濃くする部分から塗り始めて、次第に一方へ
水を含んだ水刷毛でぼかしていく。
その時、馬毛の硬い乾いた刷毛を使う「カラ刷毛の法」
でもよい。初学者は、水刷毛を学ぶほうが良い。 - 絵の具とぼかす水の分量が平均していないと
ムラができるので注意する。 - 「返り隈」…明るい部分を浮き立たせるためのぼかし方
人物画の顔や手足に、花鳥画では、花びらなどに。
隈取りの中でも特に慎重さ潔癖さ、修練が必要。 - 彩色筆と隈取り筆の両方を持ち、交互に使用する方法が良い。
※参考写真あり。
(13ページ分約4400字を要約)
- 美しく塗るためには、絵の具の溶き方と
膠水をいかに細かく溶き下ろすかにかかる。 - 絵の具と膠水の調合する量は、季節により加減する。
夏は、膠の粘度が弱いので、冬より強めにする。
表具で剥脱することがあるのは、
夏制作の作品に多い。 - 夏は、膠が腐敗しやすいため、毎日作り変える。
- 防腐剤入りの瓶入りがあるが、まだ便利とは言えず、
自分で作るに越したことはない。 - 棒絵の具は、ていねいにやるには、薄い膠水で練り降ろし、
更に、とろ火で指で擦りながら、一度乾かす。
これを「焼き付け」というが、これに少しづつ水を加え、
指ですりおろし、皿を斜めにして、上澄みを使う。 - 胡粉、黄土、丹は、一般に粒が荒いので、乳鉢で数百回擦り
膠水を加え皿に練りつける。膠水を加減する方法は、
人差し指に膠水をつけ、中指に重ね、伝わるようにして練る。
※参考写真あり
一気に膠水を加えると、溶き降ろす時に、膠と水とが分離したり、
絵の具が一様に細かくならなかったりする。 - 十分に膠水がしみて、どろどろになったら、とろ火にかけ、
指で静かに練りながら、焼き付けする。 - 使用するときは、前出した方法と同様に、人差指に水をつけ、
中指で練り降ろす方法で溶き下ろす。 - 黄土は、乳鉢で擦るときに少量の胡粉を混ぜると
扱いやすくなる。 - 岩絵の具は、皿の絵の具が十分にかぶさる程度まで
膠水を入れる。 - 臙脂(えんじ)は、志那(中国)産の紫草の汁を
丸型の綿にしみこませたもの。
適当な大きさに切ったものを碁石ほどの大きさにむしり、
熱湯をかけて絞り、薄紙で漉して湯煎して乾かす。
(鉄瓶の蓋を外し皿を乗せて、その熱で絵の具を乾かす)
これに、水滴を入れ、溶けた色汁を皿にとって使う。
膠を混ぜてはいけない。油を嫌うので、指を使ってはいけない。
最近、皿に説いたものを売っているが、
自分で煮たもののほうが、色が鮮やかである。
- 調色において、胡粉を少量加えることで
落ち着いた色調を得ることができる。
(岩絵の具を除く) - そうして加えた絵の具を
黄土 → 黄土具
臙脂 → 臙脂具
と呼ぶ。 - 落ち着いた紫の作り方
洋紅+藍 → 臙脂+藍+少量の胡粉
→ 臙脂+白群 → 冴えた上品な紫
※この時の白群は京都の放堂の白群と指定されている - 鶯茶(うぐいすちゃ)
雌黄 + 墨 + 胡粉 - 白緑茶
白緑 + 雌黄 + 胡粉 + 墨 - 丹墨茶
丹 + 雌黄 + 胡粉 + 墨 - 一般に粉絵の具と墨は混ざりにくい。
膠の加減に注意が必要。 - 岩絵の具は、
粒子の大きさと比重が同じものを選ぶことが肝要。 - 岩絵の具を混ぜるときは、皿で丁寧に混ぜてから、
膠水を加えるべき。 - 金泥は、混ぜ色として色を落ち着かせ、
品位のある色調を得ることができる。
特に、緑青の細かいものは良い効果がある。 - 一般に絵の具は、膠の加減と筆触(タッチ)によって
色調が変わる。
特に、朱・黄土・白緑・白群などは著しい。 - 朱は、美人画には、最も多く使われるので、
色々な調色法がある。 - 朱から2種類の色を取り出す。
黄口の朱…朱を溶いたものに水を加え、
その上水を別の皿にとって、その沈殿したものに
膠水を加えれば、粒子の細かい美しいものになる。
丹に近い色。
赤口の朱…初めの皿に残ったものに膠水を加えれば、
濃い朱の色、冴えた色として使える。
着物の襦袢などに。 - 朱の変化を加える…下塗り(黄土・洋紅・臙脂など)
- 臙脂は洋紅に比べ深みのある色。
美人画では、なくてはならない色。
草花にも多用する。
しかし、伸びが悪く、浸透性が強く、油気を嫌う。 - 岩絵の具の色を変化させる
…下塗り(草汁・黄土・白緑・白群など) - 岩絵の具は、フライパンで焼いて
落ち着いた色にすることがある。焼過ぎは色を失う。 - 岩絵の具を塗り重ねるときに、はじく時は、
薄荷油(はっか)を混ぜると良い。 - 背景などで、岩絵の具の上に他の色でぼかす時
ホルマリン(100倍液)をうすく刷くと良い。
これに使った筆は硬くなるので、よく洗う。
人体に良くないので、注意。 - 金泥銀泥は、膠の濃度は半量で良い。
溶く時に摩擦するほど光沢を増す。
焼き付けも2,3度繰り返すと良い。 - 金泥は、常に温めて塗ると発色が良い。
煙草盆などに火を入れておきかざすと良い。 - 指輪、かんざしなど、金属を描く場合、
丹の具を塗った上に
黄膠(きにかめ:丹と膠水を混ぜたもの)を引き、
金泥を塗り、乾いたら真綿でこする。
光沢が増す。 - 銀泥の下塗りは、白緑などを塗る。
- 銀が黒く酸化するのを防ぐには、
唐辛子を入れた水、または大根のすり汁を塗ると、
比較的保てる。 - 丹と隣り合わせにすると、両方黒くなるので、
注意が必要。 - 皿に入ったホコリの取り方「コキ上げ」
絵の具皿にたっぷりと水を入れ、斜めにし、
穂先の十分にある面相筆で、溜まった絵の具を
水のない上のほうへ筆を押しつけながら
コキ上げる。もっとも簡単な方法である。
※参考写真あり - この他、張紙、箔押、砂子振など
書きたいところだが、高等技術に属し、
文字上で学習できるものではないので
述べることをやめる。
各項目ごと、ていねいな説明がなされています。
ちょっとしたアドバイスもありがたいですね。
そして、深水さんは、写真の利用も薦められていて、
ちょっと驚きました~
また、臙脂って、わたしは使ったことがないので
興味津々です~
ホルマリンとかの話も聞いたことがなかったです。。
時代背景も今とは少し違っているのが
散見されて、しみじみと興味深いです。
僕は、写真でデモンストレーションしている手が
深水先生の手なのか?が、、、気になる~(笑)
では、写真も参考にされた作品ということで、
口絵のご紹介をします。
モノクロなので、歯がゆいのですが^^
『秋晴』について、伊藤深水さんの注釈
澄み渡った青空には、
スイスイと赤とんぼの群れが飛んでゆく。
野草のすべては秋の日差しに輝いて
金色の諧調をかなでている。
天地はまさに秋晴れである。
二人の麗人は清澄なる秋の空気を呼吸しながら、
フェルト草履を軽やかに運ぶ。
朗らかにしかも優雅なる現代女性を描出するに
絶好なシーンではないか。
さて、実践の続きです。
今回からは、更に具体的な技術について。
楽しみですね。
旧字体が多く読みにくいので、基本的に私が独自に
要約したものを載せます。
今までもですが、なるべく偏りのないよう心がけます。
⑴下図
⑵念紙と引伸
⑶描線
⑷着色と暈渲(うんせん:色をぼかして表すこと)
⑸調色